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割安な企業とは?
実際の価値よりも株価が安い割安な株を購入し、世の中の投資家がその価値に気づき株価が値上がりしたタイミングで売却するのが、売却益を得る方法です。ではどうやったら割安な銘柄を選ぶことができるでしょうか。
よく言われるのがPER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)を見る方法です。
PERは、株価が企業の利益と比べて割高か割安かを判断する指標ですね。
PBRは、株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているかを見る指標です。
ただ個人資産800億円の投資家である清原達郎氏の著書「わが投資術 市場はだれに微笑むか」の中で、”銘柄選定においてPBR(株価/一株当たり純資産)は役に立たない。本当に割安な銘柄はネットキャッシュ比率で見分ける”という趣旨の記述がありました。
割安銘柄を見分けるネットキャッシュ比率とは?
PBR=株価/一株当たり純資産=時価総額/純資産で計算します。清原氏曰く、”純資産は解散価値とも言われ、会社をたたむとこれだけのお金が残る、という印象を与えるが、上場会社で解散する会社はほとんどなく、現実的に会社を解散すると膨大な費用もかかるため、会社が解散したらという仮定を置くのは意味がない。会社が解散するときにその会社が持つ固定資産や設備を簿価で買い取る人や企業などいない。かつ会社が赤字になるとその会社の持つ固定資産の価値も下がるためPBRの値も上がる。従ってPBRは意味がない”とのことです。
代わりに清原氏が割安かどうかを判断するのに良く使うのが、以下の通り計算するネットキャッシュ比率です。ネットキャッシュとネットキャッシュ比率の定義は以下です。
ネットキャッシュ=流動資産+投資有価証券×70%-負債
ネットキャッシュ比率=ネットキャッシュ/時価総額=(流動資産+投資有価証券×70%-負債)/時価総額
流動資産の価値は100%として、投資有価証券以外の固定資産の価値をゼロとして計算し、投資有価証券に70%をかけているのは、有価証券を売却した時の税金分を保守的にみて7割がけしているとのこと。清原氏はネットキャッシュ比率が1以上であれば割安と見る、とのことですが、つまり”会社がすぐに現金化できる資産から負債を引いた金額が、時価総額を上回っていれば、その会社は割安”と判断していると言うことですね。ネットキャッシュ比率が1なら、お金を借りて時価でその会社の株を全て買うと、借りたお金は現金や換金可能な資産で全て返済可能。つまりただで会社が買えるということ。
ただこのネットキャッシュ比率というのは証券会社のHPのスクリーニング機能にはないので、自分で決算短信や有価証券報告書を確認して、計算する必要あります。
ネットキャッシュ比率>1の企業はどの程度存在するか
私は試しに、PBRが1以下で高配当の大型株(武田薬品工業、日本製鉄、本田技研工業、日本郵船)のネットキャッシュ比率を2024年6月末決算短信の数字から計算してみました。
武田薬品工業(4502)
流動資産:3,107,532百万円 投資有価証券:447,181百万円 負債:8,428,451百万円
→ネットキャッシュ=-5,007,892百万円 ネットキャッシュ比率=-1.39
日本製鉄(5401)
流動資産:4,844,508百万円 投資有価証券:2,318,284百万円 負債:5,546,726百万円
→ネットキャッシュ=920,581百万円 ネットキャッシュ比率=0.28
本田技研工業(7267)
流動資産:12,285,239百万円 投資有価証券:2,269,193百万円 負債:17,614,294百万円
→ネットキャッシュ=-3,740,620百万円 ネットキャッシュ比率=-0.45
日本郵船(9101)
流動資産:730,364百万円 投資有価証券:1,938,715百万円 負債:1,452,252百万円
→ネットキャッシュ=635,213百万円 ネットキャッシュ比率=0.27
結果的に4社ともネットキャッシュ比率は1以下でした。武田薬品工業と本田技研工業はネットキャッシュがマイナスでしたね。
とここまで計算して、著書には、清原氏が最後に計算したリストによるとネットキャッシュ比率が1以上の大型株(時価総額3000億円以上は)はゼロ、中型株(時価総額500億円以上3000億円未満)は11社、小型株(時価総額500億円未満)は309社、だったと記載ありました。
やはり大型株は小型株に比べると時価総額が相対的に割高になっているようですね。この点からも清原氏は小型割安株の購入を推奨しています。
ここ1-2年は大型株の株価の伸びが小型株より大きかったと言われていますが、本当に割安な株は小型株の中にありそうですね。
割安銘柄の選び方
ネットキャッシュ比率は企業の貸借対照表(BS)を確認すれば計算できます。
貸借対照表の左側にある資産の部の”流動資産”に、固定資産の中にある”投資有価証券”の7割の金額を加え、右側にある”負債”の合計金額を引いたものがネットキャッシュです。このネットキャッシュと時価総額を比較し、ネットキャッシュの方が大きければ、ネットキャッシュ比率が1以上の割安銘柄ということですね。
皆様もぜひ銘柄選定の際に確認してみてください。
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