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「マンガでわかる ベンジャミン・グレハムの投資術」を読みました。ベンジャミン・グレハム氏(1894年5月9日-1976年9月21日)はあのバフェット氏の師匠であり、”バリュー投資の父”と呼ばれるプロの投資家です。詳細は著書を読んでいただければですが、この本の中でグレハム氏の投資哲学の中心として”元本を保全するために安全域を確認する”と”ネットネット株を探す”の考え方が面白かったので紹介します。
安全域とは、リスクを減少させるため”ある程度余裕持つこと”を指します。安全域の計算として、以下の①②の2通りあります。
①株式の益回りが債権の利率より大きければ安全域がある
益回り=1株あたり純利益÷株価×100
益回りは上記で計算します。現在の株価で株を買うと何%の利益を得られるかを意味する数字で、PER(=株価/1株当たり純利益)の逆数ですね。グレハム氏は益回り(PERの逆数)と優良社債の利回りの差を安全域としました。
例えば日経平均株価のPER=13倍とすると、益回りは1÷13×100=7.7%となります。優良企業の社債(10年)の利回り平均を0.4%だとします。この場合、日本の平均的な安全域は7.7%-0.4%=7.3%となります。個別の銘柄を購入する際には、個別銘柄の益回りを計算し、優良社債との差が大きいほど、投資のリスクが低いと判断したということですね
②簿価が株価より大きければ安全域がある
もう一つは、企業の簿価(帳簿上の価格)と市場での価格(時価総額)との比較し、時価総額の方が低ければ安全域が広いと言う考えです。グレハム氏の計算する企業の簿価は、現金や土地などの有形固定資産から負債を引いた金額(帳簿上の価値)です。
企業の簿価(有形資産-負債)>時価総額の場合、安全域がある
これは以前”伝説の投資家にとって「本当に割安な会社」とは”で紹介した伝説の投資家である清原氏が考えるネットキャッシュ比率が1以上の企業は割安という考えとかなり似ています。
ネットキャッシュ=流動資産+投資有価証券×70%-負債
ネットキャッシュ比率(=ネットキャッシュ/時価総額=(流動資産+投資有価証券×70%-負債)/時価総額)>1であれば割安
グレハム氏は、現金等の流動資産だけでなく土地も含めた有形資産から負債を引いた金額を企業の簿価とするのに対し、清原氏はすぐ現金化可能な流動資産+投資有価証券の7割から負債を引いた金額を、その企業を買ってすぐに現金化できる価値と考えました。両社ともに共通しているのは、その企業が持つ資産から負債を引いた金額をその企業の時価総額と比較することで、投資対象として適切か判断する点は共通ですね。
グレハム氏は投資においては①②で計算する安全域をできるだけ多く確保することで、将来の見積もりが多少誤っていても損失を受けづらく、株価の変動に過度な注意を向ける必要がなくなるようにすることの必要性を説いています。これは投資では大勝するよりも、負けない投資をすることが大切ということですね。
もう一つグレハム氏の投資術で最も有名なのが、お買い得な銘柄を狙った、いわゆるバリュー投資です。
グレハム氏は割安な資産バリュー株(ネットネット株)の条件を以下の計算が成り立つ銘柄としています。
正味流動資産=流動資産+投資有価証券ー負債
正味流動資産×2/3>時価総額であれば割安
これは前述の”企業の簿価(有形資産-負債)>時価総額の場合、安全域がある”と同じ計算を使っていますし、清原氏のネットキャッシュ比率>であれば割安、という式ともほぼ同じです。
グレハム氏も、清原氏も、ほぼ同じ計算式を使って割安株を選定しているのは、面白いですね。時系列的に考えて、清原氏がグレハム氏の投資手法をまねているだけかもしれませんが。
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